Customer Reviews お客様の声

お客様の声

亀田製菓株式会社

亀田製菓株式会社 代表取締役会長田中 通泰 様

聞き手:グラムコ株式会社 代表取締役社長 山田 敦郎

 

亀田製菓のあくなきブランドチャレンジ

グローバル・フード・カンパニー化で伸びる海外比率

山田

2015年に、「グローバール・フード・カンパニー」を目指すという中期経営計画をお立てになられて、海外売上比率が間もなく10パーセントぐらいまでになられるんでしょうか。

田中会長

連結ベースでは、今8%ぐらいです。ただ、連結対象外の海外関係会社もありまして、その中で一番大きいのがアメリカのTHFで210億円ぐらい、あとベトナムのほうで30億円ほどありますので、非連結部分まで含むと大よそ25パーセントぐらいになります。(インタビュー時の2017年9月末時点で)

山田

4分の1とは相当大きい比率といえますね。

田中会長

アメリカのメアリーズ・ゴーン・クラッカーズ(以下、MGC)という会社を2013年に買収したのですが、そちらの売り上げが毎年10パーセントから20パーセントのペースで伸びていて、売上は5年で2倍になっています。後でお話ししますが、グルテンフリーやオーガニックといった人々の健康志向に合う商品を提供しているからだと思います。生産キャパシティ拡大のための工場移転も視野に入れていて、今後は売上・利益ともに貢献できるブランドに育てていくつもりです。これからもM&Aは、よい機会があれば考えていきます。

山田

グローバル化をより加速なさるということであれば、弊社の提携先のシーゲル・ゲールも米・欧におりますので、ぜひグローバル・ブランディングにも挑戦していただきたいと思います。私どものクライアントのピジョンさんは、哺乳瓶のシェアで世界の50パーセントを握ろうという野心を持っておられるのですが、米国でランシノーという少し医科向けの雰囲気があるブランドを買収されて、世界でピジョンとのダブルブランドで市場をとっていくというような戦略をお取りになっています。業界が違いますから、同様にはいかないと思うんですが、小ぶりだったランシノーが物凄く成長し始めているんです。

田中会長

ピジョンはすごいですよね。海外で、特に中国とアジアで伸ばしておられる。

山田

日清食品グループも、明星食品というブランドを傘下に抱え、統合しないで別々にコンビニなどの棚取りをされて売上を伸ばされているのも、同じような考え方だと思います。亀田製菓としても、おかき以外のお菓子を押さえていかれるとか、その違ったノウハウをグループでうまく活用していかれるとか、いろんなやり方があるんじゃないかと、今お話を伺っていて思いました。

田中会長

おっしゃるとおりですね。

亀田製菓を取り巻く5つの課題

田中会長

今、僕らの会社にとっての環境変化が幾つかあると思っています。 1つ目は、お客様の嗜好の変化です。米菓ファンは比較的年配の人たちに多いんですが、最近市場調査をしてみると、60代ぐらいの人たちがチョコレートを食べ始めていることが分かりました。ポリフェノールは健康にいいからというのがその理由です。裏返せば、私どもの商品の需要が減ってきているということです。チョコレートは甘くておいしいし、安らぎを与えてくれるものだった、それが今は身体にいいと。この間もテレビを見ていたら、中高年の女性が「自分は毎日純度80パーセント以上のチョコレートを2 枚食べているが、それによってお煎餅を食べる機会が少なくなって、太らなくなりました」と発言していてショックを受けました。

山田

ずばり言われてしまいましたね。

田中会長

そんなふうに従来の主たるお客様の好みが健康志向になってきているということがひとつあります。
2番目に、若い人の食習慣が変わってきているということ。我々の世代は朝、昼、晩の3食が常識だったわけですけれども、最近の人を見ていると、自分の好きなときに好きなものを食べる。だから食事の概念が変わってきていて、僕はそれを「腹満たし」だと言っているんです。

山田

腹満たし? 腹が減ったら食べるという意味ですか。

田中会長

そうそう。減ったら好きなものを食べる。例えば、うちの商品でソフトサラダとか、うす焼というお煎餅があるんです。ソフトサラダは18枚で150円ぐらいで買えるんですが、2枚食べてお水を2杯飲んでいただくと、お腹いっぱいになっちゃうんですよ。パソコンをしながら、スマホをやりながらでも摂れるというのが便利で、(広告もプロモーションも)何もしないのに売り上げが伸びています。食べたいときに簡単に腹を満たしたい、という若い人たちが増えているというのが、2つ目の傾向です。
3番目には、これはさっきお話ししたアメリカのMGCでまさに起こっていることですが、「ベター・フォー・ユー」という健康に対するキャッチフレーズというか、考え方が、30代くらいの女性を中心に、アメリカの西海岸から急速に広がっている。ベター・フォー・ユーとはどういうことかというと、身体にいいものを食べて、身体を健康にして、健康な身体を鍛えて精神を豊かにする、そういうライフスタイルを自分の信条とするということです。こういう哲学を持つ人が増えてきているのが米国の今のトレンドです。MGCのクラッカーは、原料にキヌア(雑穀の1つ。食物繊維や鉄分が多く含まれ、健康志向の米国人の間で最近高い人気がある)やヒエやアワを使っているので、まさにこのトレンドのど真ん中にいる商品なんですが、こういうアメリカの潮流が日本にも広がってくるでしょうから、日本市場でも健康志向はさらに強まるだろうと思っています。
4番目に私が挙げているのはネット、SNS。急速に広がっていますよね。今、食品のネット販売というのは2パーセントぐらいだと言われているんですけれど、2025年には、僕は25パーセントぐらいになるだろうと読んでいます。ちなみにスーパーマーケット協会というところは、5パーセントだと言っています。
亀田製菓はアマゾンのダッシュボタン(売れ筋商品ごとに用意されているプッシュボタンの付いた小さな端末。これを押せば該当商品がいつでも直ぐに注文できる)に、亀田の柿の種とハッピーターンを入れてもらっています。私自身は食品のネット販売比率が2025年には30パーセント以上に達すると思っています。
ネット販売が増えて人々の買い場が変わっていく。私たちの時代は、当時の新しいチャネルであるスーパーマーケットで育てられたわけですけれど、その後コンビニが出てきて、それから今はドラッグに変わってきて、今はドン・キホーテなども結構頑張っています。そしてこれからはSNSで変わっていくでしょうから、そこに当社としてどう対応していくかということです。

山田

なるほど。全面的にネットにいくわけではないでしょうが、リアルで確認してよければブランドで買っていくという流れですね。健康志向については、本当に日本でも、アメリカでも、世界でも、という感じになっていますね。

田中会長

さらに、あともうひとつ付け加えると、これはSNSと関連する話しでもありますが、自分を主語・主体とした買物構造に対して、どんなふうに我々が入り込んでいけるか、あるいはそういう仕組みがつくれるかということです。つまり、お客様のコトづくりにどう関与できるか。これも大きな課題だと思っているんですが、どう手を打てばいいかまだ分かりません。そんなことを考えていくと、当社の目指す将来というのは米菓業界だけにあるのではない。菓子かというと菓子でもない。それは食品であると。食品産業を目指していくというスタンスです。

亀田製菓のブランド力とその源泉は?

山田

さらに、グローバル・フードも目指されるわけですね。

田中会長

これは、まだ社内でオーソライズされている方針ではないものの、ここからは私の夢と思って聞いてください。今、売上高1,000億円の会社が2030年に3,000億円になるとして、3,000億円のうち1,500億円が海外、残り半分が国内。さらにブレークダウンすると、国内のうちの1,000億円が米菓、500億円が食品だとして、そのときの商売の切り口が3つあるということを言っていまして――。
1つ目は従来のお菓子で培ってきた、お菓子の持つ安らぎとかおいしさを提供していく。2つ目は健康。MGCのような健康志向のものをやって、食べながら身体をきれいにしていくというようなことですね。3つ目には、腹満たし。それを米菓ではなくて食品でどうやっていくかということで、特に食品のところは他社と提携しながらやっていくという道がある。例えば健康関連だと、PFC(プロテイン、ファット、カーボン)のバランスが最強なのは何かというと、お米。それも精米ではなくて玄米、それと大豆なんです。この組合せが一番いい。そこで、そういうものを何か新たにやっていきたいと思って、去年から社内に、何もしないぶらぶら社員をつくっています。彼らには将来の事業の柱を考えなさいと言っているんです。外部の専門家も迎えて、刺激を与えつつ、次の段階では早晩事業化を図ろうとしています。

山田

事業化ですか。健康志向の食品ということですね。

田中会長

それはどちらかというと身体にいいものを、お煎餅じゃないもので、ですね。

山田

健康志向だからといって「じゃあ健康食品をやりましょう」ということにしないで、本当にフードの部分をやっていこうとされているんですね。
(この後も田中会長から奇抜だが現実味のありそうなアイデアが数々繰り出されたが、これはオフレコに)

山田

これまでグループとして、どんな形でブランド戦略に取り組んでこられたのか、あるいは今後どういうふうにブランドを扱っていこうとされているのか教えてください。

田中会長

亀田のブランド力がどうなっているかというと、東洋経済が毎年2回やっているブランド調査(日本人が好感を持っている企業・ブランドランキング)で、うちは直近で(2017年9月発表)全日空(25位)や資生堂(41位)に混ざって26位なんです。前回(同年3月)は24位でした。亀田製菓というのは、この調査では他の著名な製菓メーカーよりも高いんですよ。
これは出来過ぎともいえる結果なんですが、この結果をよく考えてみると、亀田製菓が一番大切にしている亀田の柿の種やハッピーターンといった代表商品がお客様に信頼され評価されて、亀田ブランドを支えてくれているからだと思うんです。商いの面でもこれらの存在がプラスになっている。だから、この信用に傷をつけてはいけないといつも心がけています。安全でおいしいものをつくり続けていくということが、何より大切だと肝に銘じています。

山田

なるほど、商品とブランドがしっかり紐付いて記憶されているともいえる結果ですね。

亀田製菓グループが試みてきた挑戦の数々

山田

実際に、亀田製菓さんと私どもグラムコがおつき合いをさせていただいたきっかけというのが、2009年にリリースをされた、とよす株式会社(亀田製菓傘下のグループ会社。本社は大阪府池田市。高級米菓を製造・販売する)の「十火」(JUKKA)※01でした。同社の活性化プロジェクトでもあり、おかき新時代への挑戦でもあったと考えております。その後これが刺激となり、「かきたねキッチン」というブランドも生まれ、経営改革も推し進められたとみています。
さらに亀田製菓本体では、VIの整備や「ハッピーターンズ」※2の開発でもお手伝いさせていただきましたが、百貨店に自ら出店されて、直接お客様と店頭でやりとりされるというのは、当時としてはまさに画期的でした。長いお客様の行列も出来て話題になりました。

※01:十火(JUKKA):www.toyosu.co.jp/jukka/
2009年秋、今までの米菓の枠にとらわれない新しい美味しさや食感で、新たな顧客層の開拓を目指した新ブランド。当初は東京・南青山におしゃれな基幹店舗をオープン。その後銀座三越をはじめ全国にブティックを展開。
※02:ハッピーターンズ(HAPPY Turn’s):www.happyturn.com/happyturns/
2012年秋、大阪・梅田の阪急百貨店に1号店をオープン。亀田製菓としては初めての対面販売店。「広がる、つなぐ、おいしい幸せ」をコンセプトにした、コンビニ・スーパーなどでお馴染みのハッピーターンを原点としたアップグレードブランド。その後2016年春には、同じ阪急百貨店に、タネビッツ(TANEBITS)という亀田の柿の種のプレミアムブランドの売場も出来た。

田中会長

十火では立ち上げからいろいろご指導いただきましたし、今もご指導をいただいていますけれど、十火は、当時お煎餅といえば、家庭の味に留まっていたところを、もっと食シーンを広げたいという気持ちが芽生え始めたころにご提案いただいたブランドでした。例えばシャンパンを飲みながら食べてもらえる米菓です。そんな中で十火というコンセプトが出てきたんだと思います。米菓を食べてもらえる層を、中高年から広げていきたい。世代も超えて、所得層も、食シーンも全部広げていきたいと思っていました。そういう意味で勉強をするためにも、十火も含めていろんなことにチャレンジしてきたんですね。
一方で、ハッピーターンズのように百貨店売りするような試みは、その後各社も追随してきましたが、これも勉強だったんです。多くを学べたと思っています。特に出店誘致をして下さった阪急百貨店にはいろいろ教えていただきました。その経験は、今、コンビニなどで販売しているハッピーターンの商品展開で利用させてもらっていたりします。
何かやって、そこから勉強して、学習して次の展開を考えていくということで、やっぱりチャレンジしていくことが必要だと考えています。

山田

亀田製菓のブランドチャレンジは、業界各社が注目しています。

田中会長

十火もすっかり安定しました。最近ではお酒の獺祭とのコラボでつくった商品も、よく売れています。今度獺祭のパーティがニューヨークでありまして、お招きをいただいているので出席してきますが、同社の海外展開もユニークなので勉強になります。

井の中の蛙にならぬように

田中会長

アメリカのMGCにせよ、とよすにせよ、屋台骨の代表商品ブランドにせよ、それぞれのブランドを大事にしていこうと思っています。

山田

おっしゃるとおりです。やみくもに全部ワンブランドに集約していくなど、御業界には合わないでしょう。
今日は多くのためになるお話をお聞かせいただいて有難うございました。コンサルティングの契約も引き続きいただいていますので、どうぞどなたでもお気軽に、ご相談に来ていただけたらと。

田中会長

いや、いや、もうちょっと我々としても、外部の方との接触のスキルを高めなくちゃいけないと思っているんです。どうしても井の中の蛙になってしまいがちなので、違った視点からご指摘いただかないと気づかないことがたくさんあるわけですから。そういう意味でも活用をさせていただきます。

山田

いつでもウェルカムです。今後とも宜しくお願いします。

田中会長

こちらこそ宜しくお願いします。

企業情報

企業名:亀田製菓株式会社
所在地:〒950-0198 新潟県新潟市江南区亀田工業団地3丁目1番1号
創 業:1946年9月
従業員数(連結):3,152名
URL:http://www.kamedaseika.co.jp/