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お客様の声

住友林業株式会社

住友林業株式会社 コーポレートコミュニケーション部 部長大野 裕一郎 様

聞き手:グラムコ株式会社 代表取締役社長 山田敦郎

ブランド資産を守り、今に活かすためのグループブランディングの実践。

経営資源としてのブランド、「住友林業」をどう伝えていくか。

山田

ブランディングを始めた経緯についてお聞かせいただけますか。

大野部長

当社のシンボルマークである井桁は、住友グループ共通のマークで、その井桁が商標登録されたのは1885年に遡ります。長い年月をかけて築き上げてきた住友のブランドを毀損しないよう、井桁のシンボルマークは、住友グループの基本ルールに基づいて各社で規定を設けながら運用しています。住友林業のブランドの基本もここにあると思います。当社の創業は1691年で、1948年の財閥解体を経て1955年住友林業株式会社となりました。林業、そして木材建材の製造・流通事業を行っていましたが、1975年に住宅事業に進出しました。ここがブランドを考えるうえでも大きな転換点になりました。BtoCに事業を展開する中で、「住友林業という会社が住宅をつくっている」ということを認知してもらうために、1987年に通称「角ロゴ」(井桁と「住友林業の家」を四角形の中にデザインしたもの)を作りました。その後、BtoCの事業を中心に、「住友林業の○○」という事業を訴求する角ロゴが作られていきました。その際にはロゴの使用方法や、看板などのアイテムへの表示方法をまとめたガイドラインを定めていましたね。今回改めて見返すと、そのガイドラインにも「経営資源としてのブランド」という記載がありますので、やはり「井桁住友、そして住友林業」をどうきちんと伝えていくのか、という考えが当時からあったように思います。

山田

なるほど。そして今回、私たちがお手伝いさせていただいたフェーズでは、「住友林業の○○」という展開によって多少拡散してしまっていたコーポレートブランドをもう一度しっかりと集約させて、ブランドの価値をどこに蓄積するかを明確にしていくというプロジェクトではなかったかと思いますが、いかがでしょうか。

グループ内には「住友林業」を冠さない会社もあり、グループとしての一体感をどう醸成しつつ認知してもらうかが一つの課題だった。

大野部長

木を中心としながら海外住宅事業や介護事業など、様々な分野に事業が拡大してきました。その中でグループの総合力を発揮しながら成長していくためには、もう一度住友林業グループという視点でブランドを整理し、見直しをする必要があると感じたことがグループブランドに取り組んだ背景にあります。具体的には、グループの中には「住友林業」を冠さない会社もあり、そういった個社を含めグループとしての一体感をどう醸成しながら認知してもらうか、というのが一つの課題でもありました。

山田

一体感が欠如していると感じるような課題意識はお持ちだったのですか。

大野部長

分かりやすいところでは、看板や名刺などがバラバラで、統一感に欠けていたことですね。

山田

BtoBだけでなく、BtoCへと事業が拡がる中で、一体感を出してベクトルを揃えることで、グループとしての存在感を大きくしていこうということですね。具体的にどのようなことから着手されたのでしょうか。

大野部長

まず、経営陣や取引先などからヒアリングをし、また当社の歴史や経営理念などをふまえて我々が強みにしていることをまとめ、そこからグループスローガン「木と生きる幸福。」を策定しました。それ以降、グラムコさんにご協力いただいて、住友林業グループらしさの規定、ブランドの体系整理、ガイドラインの編纂に取り組みました。非常に重要な部分をお手伝いいただいたと思っています。

山田

ありがとうございます。実際にプロジェクトがスタートしたのはいつ頃からですか。

大野部長

実際にチームを組んでプロジェクトを立ち上げたのは2012年ですね。ブランドスローガン「木と生きる幸福。」を打ち出したのが2014年の初頭でした。

山田

プロジェクトを通じて、お感じになったのはどのようなことでしょうか。

大野部長

大事なのは、ブランド推進について経営層の強い意思を示してもらうことです。そうすることでプロジェクトは進みやすくなります。今回のプロジェクトでは、経営層の意思が明確でしたので、私はプロジェクト半ばからの参画ではありましたが、スムーズに行えた面も多かったと感じています。

山田

今ではすっかりブランディングに精通されているわけですが、当初は戸惑いもおありになったのではないですか。

大野部長

そうですね。ブランディングというのは、(ロゴなどに形はあるにせよ)プロジェクトとしては形がないものだけに、皆が共通の認識をもって取り組み内容を理解し、またどのように組織に落とし込んでいくかが、非常に難しいと思います。そのためには経営層の明確な意思表示が大事ですし、時間も必要だと思います。

インターナルの取り組みとして、年に一度、各本部長クラスを集めてブランドの強化委員会を実施。1年間の方針なども皆で討議。

山田

ブランディングを導入されて、色々なことが整いました。VIやブランドスタイルも整備されました。その後、インターナルに向けた取り組みとしてどのようなことをなさったのでしょうか。

大野部長

例えば当社の事業内容とともに「木と生きる幸福。」というブランドスローガンを印象づけるために、新幹線車内の電光掲示板で事業内容を伝える広告コピーの社内公募を実施しました。社員にあらためて会社のことを考えてもらうきっかけになったと思います。そのほかには、「あなたにとっての、木と生きる幸福。」というテーマで社員とその家族が撮影した写真を応募してもらい、審査のうえ選ばれたものを使用して新聞広告を製作するという施策も実施しました。これは内部だけでなく、外部に向けて弊社のことを知ってもらうことにもつながったと思います。 さらに、住友林業グループ内でブランドについての意識を高めることを目的に、会議体を設けています。一つは、各事業部をまとめる主管者、関係会社の社長を集めて年に一回、ブランドの強化委員会を開催しています。そこで1年間の方針を皆で討議しながら決めています。山田社長にも一度、その会の中で講演していただきましたね。 また、各グループ会社の広告・コミュニケーション担当が集まるブランドコミュニケーション委員会も毎月1回開催しています。これは情報交換や勉強を目的にして集まる会で情報発信をする部署に、意識を高く持ってもらうための取り組みです。

グループの一体感がお客さまの安心につながる。そのためにもブランドを整備することが大事だった。

山田

経営層だけでなく、実務を担当する社員にもしっかりと取り組まれているのは非常に印象的ですね。それだけブランド構築への強い意志をお持ちなのだと思います。今度は外部に向けたお話を伺いたいと思いますが、その前に、現下の競合環境というのはいかがでしょうか。

大野部長

当グループは木材を通じて川上から川下まで事業展開していますが、木材・建材の流通事業では商社と競合しますし、住宅やリフォーム、仲介など各事業でも当然競合企業はあります。

山田

注文住宅でおもしろいなと思うのは、契約する時には何も実体がないんですよね。まさにブランドで、ここなら大丈夫、きちんとやり遂げてくれるということで任せてもらう側面があるからこそ、ブランドが大事になってくるのではないかと思うのです。

大野部長

そうですね、例えば家を建てたあとのメンテナンスやリフォームを、グループ会社の住友林業ホームテック社と連携して行っており、一体感を持って対応できることがお客さまの安心にもつながっています。住まいを建てた後に、アフターサービスやリフォームだけでなく例えば介護までワンストップでできるということを分かっていただけるように、ブランドを整備することが非常に大事だったと思います。

山田

実際に、お客さまから見た時の反応というのは、ロゴなど細かい話にはなかなかならないとは思うのですが、何か評判が変わってきたというようなことは、把握されていますでしょうか。

大野部長

2013年からブランド調査を実施しています。住宅事業を展開していることもあり、住友林業という会社は一定の認知度があるのですが、「木と生きる幸福。」を含めて、認知度や共感度が毎年上がってきており、結果に表れてきているなと感じています。また、事業の拡がりに伴って、グループ各社・各事業の広告でも「木と生きる幸福。」を意識して発信していますので、住宅以外の事業の認知も少しずつ上がってきています。まだまだ途上ではありますが、当初の目標に向かって一所懸命に進めているところです。

山田

一つの大きなコンセプトのもとで多様な事業を展開していかれる過程で、林業の会社から住宅の会社に、住宅の会社からさらに環境に配慮する、そして人の幸福にコミットする会社に変化していく。そういう拡がりが感じられますね。

大野部長

例えば「環境に非常に配慮して事業を展開している」という印象を持っていただけることによって、住宅事業にも波及効果がもたらされると考えています。

山田

つまり、我々がブランディングで言う、支援と貢献の関係ですね。コーポレートブランドが事業ブランドを「支援」し、事業ブランドに価値がたまってきたらそれがまたコーポレートブランドに「貢献」するという循環を築くことが大切です。これからさらに、住友林業グループのファンを増やすために取り組まれていることはありますか。

大野部長

それは、我々の歴史とも関連しています。愛媛県別子銅山の開坑とともにその銅山備林の経営を担ったのが住友林業の始まりです。銅山経営にあたって、建築用、坑道の坑木や銅の精錬のための薪(まき)が必要となり、木を伐採する必要があったんですね。長年の伐採などの結果、周辺の森林がかなり荒廃してしまって。国から預かった土地をこのままにはしておけないということで、1894年に当時の別子支配人によって大造林計画が開始され、多い時には年間200万本以上の植林を行いました。100年の計で荒れた山を元に戻しましょうということで、長い期間をかけて森に豊かな緑を取り戻しているんです。今の世の中ではサステナブルという言葉がキーワードになっていますが、それこそCSRなどという言葉のなかった頃から、我々自身が取り組んでいたことであり、我々の原点はそこにはあるのではないかと思います。そういう意味で、木の新たな価値を創造し、木の魅力を活かした事業を行っていくことが、自然環境を含めた社会貢献であり、我々だからこそできる事業、または使命ではないかということで、社員一同取り組んでいるところです。

ブランディングを推進するためには、経営層も含めた強いコミットメント、やり通すんだという強い意志がないと難しい。

山田

それは素晴らしいですね。とてもドラマチックなお話ですし、企業文化として根付いているという感じがします。ブランディングというのは、始めたら終わりがない。ずっとやり続けないといけないと私はよく言うのですが、今後ブランディングを進めていこうとお考えの企業に向けて、ひとことメッセージをいただけますか。

大野部長

私自身が非常に強く感じていることですけれど、ブランドというのはなかなか明確な答えがない中で、どうあるべきなのかを、様々なステークホルダーの意見に耳を傾け、また市場を捉え日々勉強をすること。それと、推進するためには経営層の強いコミットメント。やり通すんだという強い意志がないとなかなか難しいと思っています。

山田

経営トップの皆さんも一つの考えを貫いて、ブランドを作り上げ、守っていくという考えで進めていくべきということですね。最後に、グラムコに対するご要望や評価をお聞かせいただけますか。

大野部長

今申し上げたようになかなか明確な答えがない中で、ちょっと迷った時に、大きな方向性を一緒になって考えていただける。アドバイスをいただけているので、非常に感謝しています。ぜひ今後ともよろしくお願いします。

山田

私はつねに、とことんお付き合いするということを信念としておりますので、こちらこそよろしくお願いします。貴重なお話をありがとうございました。

企業情報

企業名:住友林業株式会社
本社所在地:〒100-8270 東京都千代田区大手町一丁目3番2号(経団連会館)
創 業:1691年(元禄4年)
設 立:1948年2月20日(昭和23年)
URL:http://sfc.jp/