日本CI会議体の11月度勉強会で、世界的に活躍されているフォントデザイナー、小林章さんが講演されました。武蔵野美術大学ご卒業後、写研に入社され原字の設計をされていましたが、その後渡英されカリグラファーや工芸家らと交流を持ち、帰国後欧文書体の開発に携わられました。その後フリーランスとして欧米のデザインコンテストで多くの賞を受賞。その名前が書体名としても知られるアドリアン・フルティガー氏ら巨匠とともに書体の改刻などに取り組まれ、現在はドイツのMONOTYPE GmbHでさまざまなプロジェクトに取り組んでおられます。
会員を含む30名近い参加者が集まる中、フルティガー書体復刻の過程や、ソニーフォント=SST制作の考え方など、我々ブランドの専門家でも知り得なかった多くのエピソードを知ることができました(SSTはヘルベチカとフルティガーの良いところを併せた書体であり、ヘルベチカの硬質感と、当初空港のサイン用として開発されたフルティガーの可読性の高さが融合したもの。アラビア文字なども含む93言語に対応しているそうです)。
完全なオリジナル書体であるAKKO(アッコ=Akira Kobayashiから命名)制作のお話し、Wonders!で知られるパナソニックの見出し用アルファベット開発のお話し、日本たばこのMEVIUSに込められた文字間隔などの注力ポイントについてなど、話題は多岐にわたりました。
日本はまだこれから、という段階ですが、欧米では独自の書体を持つ企業が多数あり、今後も増え続けると思われます。
この日の2時間以上に及ぶ講演とディスカッション(質疑応答)で印象深かったのは、以下の諸点です。
・フォントは目に見える「声」である。どんな声で語りかけるかが大事。
・よい書体は20年経ても古くならない。悪目立ちしない、デザインに無駄のないそぎ落としが重要。
・カーニング(文字と文字の間の字詰め)が命。フォント自体のデザインと同じくらい時間を掛けて行う(字間のデータは文字データに当初から埋め込まれています)。
・文字には内側(カウンター)と外側(周辺のアキの部分)があり、そのバランスが大切。
・日本人でも精通すれば欧文書体の開発が当然出来るようになる(参加者の質問に答えて)。
小林さんに最後に問うてみました。どうしてフォントデザイナーを目指したのかと。
「それは小学校時代の課題ポスターでした。交通安全週間か何かのポスターが課題でした。絵を描くのが好きだったので、車の絵はうまく描けるのですが、文字の部分も全体の完成度に対して重要な要素であると、そのとき気付かされました。文字の出来栄えが悪いとポスター全体のクオリティも下がる。文字のデザインが重要だと知ったのです」
セミナーの後、近くのお店で懇親会も行い、フォント談義で大いに盛り上がりました。
参加者の皆様有難うございました。
次回は「UXやカスタマージャーニーについて」「企業のコミュニティサイトについて」などを企画しています。振るってご参加ください(非会員の方は、グラムコ山田までお問い合わせください)。