Customer Reviews お客様の声

お客様の声

みやぎ生活協同組合

みやぎ生活協同組合(みやぎ生協) 理事長宮本 弘 様

聞き手:グラムコ株式会社 代表取締役社長 山田敦郎

 

被災地の生産者もお客様も元気にするブランド、「古今東北」。

復興のシンボルとしてのブランド。

山田

「古今東北」(ここんとうほく)のブランドの開発時には、大変お世話になりました。2015年11月に発表されて以来、順調に成長していると伺って、お手伝いさせていただいた私どもも大変嬉しく思っています。現在のブランドの状況や成果をお聞かせいただけますでしょうか。

宮本理事長

東日本大震災から4年が経過して古今東北がスタートしたわけですが、それ以前にも震災直後から、被災地でダメージを受けた生産者や工場を元気づけようと、支援のネットワークを立ち上げ、各方面と一緒にムーブメントを起こしていました(食のみやぎ復興ネットワーク=宮城県内の生産・加工・流通の事業者が、震災からの復興を目指して立ち上げたネットワーク。みやぎ生協はその起案者)。確かにその広がりもあったのですが、“恒常的”に続けていくためにはもう一つ何かが必要だと考え、このブランド(古今東北)をつくるという結論に至りました。
すでに多くの皆さんから、古今東北ブランドが復興のシンボル的な意味合いを持ったものとして捉えられているのと、「東北」を冠したブランドなので、東北のいいもの、美味しいもの、東北の地域振興につながるものという認識を持っていただいています。最近では、これまで関わっていなかった生産者の皆さんやメーカーさんから、一緒にやらせてほしいというお話が来るようになりましたし、消費者の方々からも、このブランドいいね、という声を頂戴するようになって、まだまだ完成形になったとは思っていませんけれど、スタートしたときの思いのかなりの部分を、この2年間で実現しつつあるという感覚を持っています。
売上のボリュームとしては、今期(2年目)は初年度の2倍のペースで進んでいます。ただ、震災で失ったボリュームにはまだ遠く及びませんので、今期の10倍くらいの規模にしていかないといけません。今の段階では順調といえますが、さらに大きく広げていかなければという使命感を持っています。

山田

古今東北というブランドの、次の大きな発展につながるスタートができたということですね。

宮本理事長

そうです。それから、メーカーさんや地域の人と一緒になって取り組んでいるということもあって、通常であれば生協がつくったものは生協のルートでしか販売しませんが、古今東北ブランドの趣旨に賛同していただいた結果、本来うちと競合となるような販路(例えば、いわき市のマルトさん)でも扱っていただいていますし、地元のコンビニや、今後はデパートのお中元・お歳暮や地元のホテル・旅館のお土産コーナーなどにも広げていきます。

山田

それは素晴らしいチャレンジングな展開ですね。

 

地域へ、全国へ。食品から出発して暮らし全般にかかわるブランドへ。

宮本理事長

その意味では、このブランドは生協だけのブランドではなくて、本当に復興支援、東北を元気づけるブランドになりつつあります。こういうことをやっているのは、生協でもうちくらいかもしれませんね。

山田

今、取り扱っていらっしゃる品目はどのくらいですか。

宮本理事長

大体100アイテムくらいです。当初は宮城と岩手が中心でしたけれども、アイテム数にばらつきはあるものの青森、秋田、山形、福島のものもブランドに加わって東北6県が揃ってきたのと、当初はコマツナのような菜種を使ったものが中心だったところから、だんだん海産物にまで広がってきました。また最近では、昔から添加物を使わないことで有名だった宮城の「坊っちゃん石鹸」の取り扱いも始まりました。こちらの会社は被災されたわけではないのですが、たまたま私が地元の異業種交流会で講演させていただいたときに、古今東北のお話をしたら、そこに来られていた坊っちゃん石鹸の社長さんから、ぜひうちもこのブランドで売りたいというオファーをいただいて、じゃあ、一緒にやりましょうということになりました。ブランドコンセプトを決める際にも議論した、食品だけではなくて、日用品というか、暮らしに関するようなもの、つまり生活全般に広げていきたいという方向に向かいはじめたことになります。

山田

仲間に交ぜてくださいと申し出てくださる方々がいらっしゃるというのも、ブランドとしてはすごいパワーを感じますね。

宮本理事長

例えば山形の銀行さんが、地元の企業を集めて商談会をやる際に、(株)東北協同事業開発(みやぎ生協の子会社。古今東北ブランドの運営を担う)のメンバーも参加して、マッチングしてもらった結果、そこから、じゃあ、こんな商品をつくりましょう、となった事例なども生まれてきています。
以前は、みやぎ生協のプライベートブランドをずっとつくっていたのですが、あるときそれをやめて、全国の生協で一元的につくるように集約したんですね。今回のブランドの立ち上げで、改めて地元の企業の皆さんとまた一緒になって商品をつくるという、新たな展開ができるようになったのも、このブランドの一つの大きなプラスの意味になっています。

古今東北がもたらした3つの変化。

山田

このブランドが導入された後、みやぎ生協さんの内外で何か変化はありましたか。

宮本理事長

まず、職員の採用活動で大きな変化がありました。就職説明会で学生に古今東北のことを紹介すると、ものすごく感動してくれるんです。自分もそういう仕事をぜひやってみたい、と。実際には、この仕事自体、生協の職員全員がやれているわけではないのですが、でもそういうことをやっている生協という意味で共感してくれる学生がうんと増えました。 ほかにもいろいろな活動をしていますけれど、古今東北が学生にとって非常に魅力的な活動に映るということと、そういうことをやっている生協の社会性を考えて、自分の職場としていいんじゃないかと思ってくれる学生がたくさんいるということ。これも一つ、大きな成果かもしれません。 2つ目に、内部の変化としていえることは、バイヤーの成長です。 先ほど、以前取り組んでいた生協のプライベートブランドのことをお話ししましたが、東北とか宮城で個別開発するのをやめて、全部全国の生協で一本化した結果、自分たち自身で商品を探し出す、つくり出すといった類のバイヤーの仕事が無くなってしまった。今は、古今東北の商品開発に取り組みはじめ、商品をつくる必要性から、自ずとまたバイヤーに力が付くのです。製造過程から含めて理解をしていないとできないことですから。 商品を仕入れて売るだけというバイヤーが多くなっていたときに、古今東北のこういう活動を通して、実際に工場に行って商品開発を経験することが、バイヤーとしてより力を付けていくことにつながってきているのです。つまり、マネジメントも含めた商品開発の力、商品力につながっていると思います。 3つ目としては、古今東北を含め、復興の支援を生協全体でやっているということを、継続的に、中の職員にも、その他のステークホルダーの皆さん――生協に関係する取引先の皆さん、生協に参加してもらっている組合員の皆さん――にも理解を深めていただけているということです。古今東北というブランド名も、ハンコ風の太鼓判マーク(古今東北のシンボルマーク。保証の印という意味でハンコをモチーフにした)もすごく好評です。 東北全体の生協の中で、うちの地域のこういうものもぜひ古今東北に入れてほしい、といったような声も出てきています。

山田

ますます大きく育ちそうな気配ですね。

宮本理事長

そうですね。もっと大きく成長させたいという思いが募りますね。

継続こそ力なり。ブランドの永続性が地域を応援し続ける力になる。

山田

以前支援ネットワークの手を差し伸べられていた時期というのは、どうしても期間が限定されましたよね。それが終わるからということもあって、今回のブランドを立ち上げたのでしたよね。

宮本理事長

食のみやぎ復興ネットワークをやっていたときは、どうしても単発で終わっていたのです。これをやろうとスタートさせ、それをやり終えたら、うまくいったねということで終わってしまう。冒頭にも申し上げた、これが古今東北を立ち上げた理由の一つでした。古今東北のような形で商品開発をすると、産地だとか、生産者だとか、原料の確保というのをずっと考えていかないといけません。そのために生産者やメーカーの方たちと話をして、継続できるようなボリュームをどう確保するか、あるいは価格をどう設定していくかといったことも詰めていきます。そのことが、結果的に地域をずっと応援していくことになるわけです。我々もさまざまなことに責任を持つし、生産者の方たちも一緒になってやっていく。そこがネットワークで展開していたときと大きく違う部分だと思っています。

みやぎ生協のブランド力。

山田

継続性が重要なんですね。ちなみにみやぎ生協さんは、宮城県下の組合員の比率でいうと、全国ナンバーワンを誇っている。

宮本理事長

お陰さまで、県内の世帯に対する比率は全国の生協の中で1番です。今、73パーセントです。
東京のコープみらいという生協が360万人で、2番目が札幌と神戸の160万人など、組合員数からいうとうちが73万人なので、5番目ですね。でも県内の世帯数に対する比率は一番高いんです。

山田

県内世帯の10軒に7軒以上が生協に入っているなんて、驚異的ですね。みやぎ生協さんとしてのブランドについて、どんな姿勢で臨んでいるのか教えてください。

宮本理事長

「みやぎ生協の目指すもの」という指針を1997年に決めてもう20年が経ちます。その前からずっとそうしてきたんですが、私たちには私たちの活動を定義するいくつかのキーワードがあるんです。例えば「協同の力で」という、つまり、1人でやるんじゃなくてみんなでやるということや、貧富や格差の問題、福祉の課題、地産地消のことなどにも取り組みながら、安全で安心して食べられるものを提供して、「人間らしい暮らし」を実現するということ。「平和」で「持続可能な社会をつくる」という社会や環境への取り組みなどもそうですね。
一般的な流通業だけではなくて、地域と一緒になりながら暮らしを豊かにしていくという考え方に基づいた、さまざまな事業や活動が、地域の皆さんから信頼をいただいて、結果お店に来ていただいたり共同購入していただいたり、そして何よりも生協の組合員になっていただくという、ある意味、信頼のブランドみたいな形になっているのではないかと思っています。生活協同組合なので、我々が何かつくるというよりも、組合員の皆さんのニーズに沿った形で事業を行うことが、結果的にはそういうブランドをつくり上げるということにつながっていると考えています。

ブランド構築プロセスは新鮮に感じたし、極めて重要。

山田

古今東北ブランドの開発は電通東日本さんと一緒にお手伝いさせていただいたのですが、当時を振り返っていただいて、私たちのサポートにはどんな評価をいただけたのでしょうか。

宮本理事長

いや、本当に初めての経験でびっくりしましたよ。考え方だとか狙いだとかを、ああいうふうに(セッションで)掘り下げながら、やりとりをしながらつくっていくのを今までやったことがなかったので。ただ単に名前とかマークとかイメージとかがあって、その中でどれがいいかといったやり方ではなくて、古今東北の場合は、ディスカッションさせていただきながら、どんなことを目指すのか、それをやる思いは何なのかということをずっとやりとりをしながらブランドをつくったというのは、ものすごく新鮮でした。そのことでコンセプトが明確になってイメージも明確になってくる。そういう手法は、さすが違うなと思いました。

山田

その後も継続的に同様のプロジェクトをお手伝いさせていただいていますので、本当にありがとうございます。

宮本理事長

コンセプトに根差したテーマやそれをあらわす言葉から、デザインやロゴを掘り下げてつくっていくような手法を、ぜひ継続していただきたいと思います。
何のためにやるのか、何を狙ってどういう思いでやるのかということを持たないでつくってしまうといいものができません。そして、その後にも思いがつながらないと伝わらない。
やっぱりそういうことは重要ですから、これらを踏まえながら、ずっとやり続けていっていただけるとありがたいです。今後も期待していますので、ぜひ宜しくお願いします。

山田

ありがとうございます。ブランドは価値の蓄積先、本当に大事な蓄積箱ですので、ぜひ古今東北に限らず、みやぎ生協の皆さんでリーダーシップを振るっていただいて、ブランドを高めていただきたいと願っています。本日はどうもありがとうございました。

組合情報

名称:みやぎ生活協同組合
本部所在地:〒100-8270 宮城県仙台市泉区八乙女4-2-2
設 立:1982年(昭和57年)
組合員数:723,122人(宮城県内世帯加入率73.0%)
URL:http://www.miyagi.coop/